「ゆびぬき小路の秘密」を読んで
時間旅行の物語が好きです。
で、小風さちさんの「ゆびぬき小路の秘密」です。
舞台はイギリスのサウスウッドという町。
仕立て屋のおばあさんが作るコートが、着心地が良いのです。
袖を通すと腕を吸い込むようにするりと着れてしまう。
着た時に何かやわらかいものに、ふわりと包まれたような感じに
なるというのです。
ほかにも、石畳を歩くときの足の裏の感じが描写されているのですが、
体の感触が読んでいて伝わってくるのが良いなと思いました。
そして、仕立て屋のおばあさんが、
「大切なものほど、手放さなければならないんだよ、バートラム」
と、着心地の良い服を仕立てる秘密を教えてくれます。
そこに時代を超える真実が書かれているように感じました。
絵は小野かおるさん。
白黒の線画ですが、状況の説明だけではなく、読者の参加を求める
絵です。人物たちの目がボタンのようで、瞳が描かれていません。
表情を細かく描かないことで、物語の挿し絵としてのバランスが良い
のだと思います。この絵を助けとして読者は自由に想像することができます。
下の私の絵は、靴が面白くて描きました。どこのメーカーか知りませんが、
編み込んであるヒモが黄色だった。