僕の道先案内人
僕が10代の終わりにさしかかった頃、これから何をしていいのかわからなかった。
それはバレエでローザンヌコンクールに出るという夢が破れてしまったからだ。
不合格や落選、不採用に失恋という門前払いなんて人生にはよくあること。
でも初めての挫折で部屋に引きこもってしまうほどだった。
もう一度挑戦するか、さっぱりあきらめるか。
そこで僕はラクガキを始めた。
その頃、母が小学校の音楽の先生をしていて、
作曲家の林光さんがやっていた「うたの学校」
という集まりがあった。小学校の体育館でひたすら歌う。
そこでの発表会を宣伝するポスターを手描きでつくった。
と言っても正式に頼まれたわけじゃない。
勝手に描いた。何十枚も。墨一色で。体育館の壁にずらっと貼って。
それを偶然見た人がいた。
今、水彩画家の永山裕子さんだった。
その頃の彼女は芸大の院生でボヘミアンなお姉さんという感じだった。
彼女はじっと僕のポスターを見ていた。
少し涙目になっていて、何かが彼女の心を震わせたようだ。
そして、僕が描いたことを知って驚いたようだった。
「こんなに大きな人が描いたのですか?」と言った。僕は19歳で小柄だったが。
あとでわかったことだが、彼女は小学生が描いたものだと思ったようなのだ。
僕は今も小学生みたいに描いています。